合併症とは何ですか?
医学における「合併症」(complications)とは、妊娠や出産の過程で問題や異常が生じることを指します。妊娠中にも出産時にも起こる可能性があります。合併症はお母さんと赤ちゃんの健康に影響し、ときには双方に危険が及ぶこともあります。

1. 異所性妊娠
異所性妊娠(Ectopic Pregnancy)とは、受精卵が子宮内腔の外に着床する状態で、多くは卵管で起こります。このような妊娠では赤ちゃんが育つまで妊娠を継続することができず、お母さんにも直接的な危険があります。胎芽が大きくなると卵管が破裂し、腹腔内出血によって命を落とす可能性があるためです。注意すべき症状には、片側の下腹部痛、性器出血、肩先の痛み、立ちくらみ、失神があります。妊娠初期にこれらの症状がある場合は、すぐに病院を受診してください。(情報提供元:NHS)
2. 産後出血
産後出血(Postpartum Bleeding)とは、出産後に通常よりも多量の血液を失う状態で、世界的に妊産婦死亡の主な原因の一つです。多くは出産後24時間以内に起こりますが、数週間後までに起こることもあります。最も多い原因は、出産後に子宮が十分に収縮しないことです。そのほか、腟や子宮頸部の裂傷、胎盤やその一部が子宮内に残ること、血液凝固の異常などが原因となります。退院後、1時間以内にナプキンがいっぱいになるほどの出血、大きな血の塊、動悸、立ちくらみがある場合は、すぐに病院を受診してください。詳しくは、知っておきたい産後の体の状態をご覧ください。
3. 高血圧
妊娠中の高血圧(hypertension)は、お母さんとおなかの赤ちゃんの健康に影響することがあります。適切な治療を受けないと、妊娠高血圧腎症(preeclampsia)や早産などの合併症が起こるリスクがあります。激しい頭痛、目のかすみ、みぞおちの痛みや圧迫感、顔や手の急なむくみがある場合は、速やかに医師の診察を受けてください。4. 糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中に血糖値が高くなる状態を指します。妊娠中に分泌されるさまざまなホルモンによって、糖が細胞に取り込まれるのを調節するホルモンであるインスリンの働きが変化するために起こることがあります。
5. 甲状腺機能亢進症
甲状腺は首にある内分泌腺で、体の代謝を調節し、赤ちゃんの脳の発達にも重要な甲状腺ホルモンを作ります。甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)とは、甲状腺がホルモンを過剰に作る状態です。妊娠中によくみられる原因はバセドウ病です。症状には、動悸、脈が速くなる、暑がりになる、大量の発汗、手の震え、体重が増えない、または減る、激しい嘔吐などがあります。治療を受けないと、妊娠高血圧腎症、流産、早産、赤ちゃんの低出生体重のリスクが高まることがあります。症状がある方や甲状腺の病気の既往がある方は、医師に伝え、血液検査を受けて、妊娠中に適した薬を処方どおりに使用してください。自己判断で薬を中止したり、量を変更したりしないでください。(情報提供元:NIDDK)
6. 尿路感染症
妊娠中の尿路感染症(Urinary Tract Infection:UTI)はよくみられます。妊娠に伴って尿路に関わるホルモンや筋肉の働きが変化し、尿路内の環境が変わることで、感染のリスクが高まることがあるためです。妊娠中のUTIを予防するには、水分を十分にとって定期的な排尿を促す、尿を我慢しない、性交後に排尿する、排泄後は毎回前から後ろに拭くことが大切です。排尿時の痛み、普段と違う頻尿、腰のあたりの背部痛、発熱がある場合は、医師の診察を受けてください。感染が腎臓まで広がると早産につながることがあります。自己判断で抗菌薬を購入して服用しないでください。
7. 前置胎盤
通常、胎盤は子宮壁の上部または側面に付着します。前置胎盤(placenta previa)とは、胎盤が低い位置に付着し、子宮口の近くにある、または子宮口を覆っている状態です。妊娠中期から後期に子宮の下部が伸びると、胎盤の一部が剥がれて出血することがあります。主な注意すべき症状は、腹痛を伴わない性器出血です。大量に出血し、お母さんと赤ちゃんの双方に危険が及ぶこともあります。妊娠中に性器出血があった場合は、量の多少にかかわらず、すぐに病院を受診してください。多くは妊婦健診の超音波検査で見つかり、医師が安全な出産に向けた計画を立てます。帝王切開が必要になるケースも多くあります。(詳しくはACOGをご覧ください)
合併症の予防
妊娠や出産に伴う合併症の予防では、お母さんと赤ちゃんの健康を大切にすることが重要です。合併症の予防に役立つ方法をいくつかご紹介します。
定期的な妊婦健診:妊娠中に医療チームがお母さんと赤ちゃんの健康状態を確認することで、合併症の兆候を早い段階で見つけやすくなります。
健康的な生活:栄養のある食事や適度な運動を心がけ、たばこ、アルコール、薬物を避け、ストレスを減らすことが、リスクの軽減につながります。(妊娠中のストレス解消に役立つ活動もご覧ください)
体重管理:妊娠中に適切な体重管理を行うことで、妊娠高血圧(PIH)、妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia)、妊娠糖尿病などの合併症のリスクを減らすことができます。(妊娠中の体重管理に役立つ食事メニューも参考にしてください)
口腔内の健康チェック:口や歯の健康を保つことで、妊娠に影響する可能性がある口腔内の感染症のリスクを減らすことができます。
感染症の予防:健康を保つこと、手洗い、感染予防に取り組むことが、妊娠に影響する可能性がある感染症のリスク軽減につながります。
この記事が、赤ちゃんを迎えたいと考えているお父さんとお母さんのお役に立てれば幸いです。妊娠にはリスクがありますが、予防のためにできることもあります。妊娠前に健康診断を受け、赤ちゃんが無事に生まれるまで医師に相談しながら過ごしましょう。妊娠中に役立つヒントは、こちらでもご紹介しています。
参考資料:
- https://my.clevelandclinic.org/health/articles/24442-pregnancy-complications
- https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/staying-healthy-during-pregnancy/4-common-pregnancy-complications
https://www.nhs.uk/conditions/ectopic-pregnancy/
https://www.niddk.nih.gov/health-information/endocrine-diseases/pregnancy-thyroid-disease
https://www.acog.org/womens-health/faqs/bleeding-during-pregnancy


